日常生活で起こったイイ話「まだ修理出来ますか?」


企業相手に機械なんかを修理する仕事をしているんだけど、 
少し前に20年以上前の型の電動ドリルが届いた。 
「動かなくなったのですが、まだ修理出来ますか?」 
と一筆添えてあり、珍しく個人方から送られてきた。 

故障原因はただの接触不良だったんで、 
ちょっと弄れば動くようにだけはなったけど、 
かなりガタがきててまともには使えない。 
代替部品も流石に打ち切りになってた。 
 

「部品も打ち切りになっていますし、 
申し訳ないですが修理は無理ですね・・・」と電話したところ、 
送り主の女性は「そうですか・・・」と暗い声。 

「とりあえずは動くようにだけはなったんですけどね、 
まともには使えないですね」と言った瞬間、 
「う、動くようになったとですかーーーーーー!!」と大絶叫。 

そこからは打って変わってもの凄いテンションで 
「ありがとうございます!!本当にありがとうございます!!御幾らですか!」 
と電話越しでも分かる位大はしゃぎ。 

動くようになったとはいえ 
中途半端な修理で御代を戴く訳にもいかないので、 
「いや、着払いでお返しさせて頂けるなら代金は結構ですよ?」 
と言うと、 
「いやもういくらでも良いですから仰って下さい!!お願いします!!お願いします!!」 
と何故かお願いされてしまった。 

その後「いや、本当に結構ですからw」 
「いや、お支払いしますから!!」の押し問答がしばらく続くと、 

「実はそのドリルなんですけど、私の父がずっと愛用していたものでして、 
その父も今や半ば寝たきりで、『俺もドリルも動かなくなった』 
なんていい出すもんだから、 ドリルが動くようになれば 
父も元気が出るかなって思ったんですよ。 
だから、幾らでもかまわないですから仰って下さい」 
とその女性。 

まさかこの仕事しかも電動ドリルでこんなドラマみたいな話を聞くとは・・・ 
なんて驚きつつ 
「それなら尚更御題は結構ですから、代わりにお父様に宜しくお伝えください」 
と、よく分からない文言で代金が要らないことをなんとか押し切り、 
その後もしばらく、これでもかって位の感謝の言葉と賞賛を送ってもらって電話を切った。 

いい人ってよりはすごく親思いの人だけど、俺も親を大事にしなきゃなーなんて思ったよ。